コラム

心房細動の原因とリスク

心房細動には複数の原因・リスク要因があります。自分に当てはまるものを把握することが、治療や生活改善の第一歩です。また、放置した場合に脳梗塞などの重篤な合併症につながるリスクについても、正しく理解しておくことが大切です。

心房細動の3大原因

心房細動の原因として、日本・アメリカ双方の疫学調査で共通して確認されているのが次の3つです。これらに共通しているのは、「いずれも心臓に負担がかかった状態である」という点です。

1

加齢

年齢とともに心臓の機能や電気信号を伝える組織が衰え、心房細動が起きやすくなります。50代から発症頻度が上がり始め、70代男性では約3.4%、80歳以上の男性では約4.4%に達します。

2

高血圧・心臓病

高血圧や、心臓弁膜症・心筋症・狭心症・心筋梗塞などの基礎疾患は、心臓に直接的な負担をかけます。特に弁膜症は心房細動との関連が強く、注意が必要です。

3

飲酒(アルコール)

アルコールの分解産物であるアルデヒドが心筋を傷つけます。習慣的な過度の飲酒は、心房細動の発症リスクを大きく高めます。

見落とされがちな原因① 睡眠時無呼吸症候群

「いびきがひどい」「朝起きても疲れが取れない」「日中に強い眠気がある」——こういった症状がある方は要注意です。

睡眠中に呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群は、心房細動の重要なリスク要因の一つです。

なぜ心房細動につながるのか

無呼吸中に低酸素状態が続くと、心臓に大きな負担がかかります。この繰り返しが心房細動を引き起こしやすい状態を作り出します。

主な原因と対策

睡眠時無呼吸症候群の原因は肥満が多いですが、痩せている方でも「扁桃腺の肥大」「顎が小さい」「鼻炎・副鼻腔炎」などが原因になることがあります。

治療には、睡眠中に装着する簡易型人工呼吸器(CPAP=シーパップ)が有効です。CPAP治療を行ったことで心房細動がまったく起きなくなった方もいます。肥満が原因の場合は減量も重要です。

「いびきがひどい」「日中に強い眠気がある」という方は、睡眠時無呼吸症候群の検査も検討してみてください。心房細動の治療と合わせて取り組むことで、より効果が期待できます。

見落とされがちな原因② 甲状腺機能亢進症

心房細動が疑われる患者さんを初めて診察する際には、必ず甲状腺ホルモン値の検査も行います。

甲状腺が過剰にホルモンを産生する「甲状腺機能亢進症」になると、全身の細胞が過活動状態になり、脈が速くなります。この頻脈の一つとして心房細動が現れることがあるためです。

甲状腺機能亢進症の治療でホルモン値が正常に戻っても、心房細動がそのまま残ってしまうケースも多くあります。その場合は、電気的除細動やカテーテルアブレーション治療が検討されます。

日常生活に潜むその他のリスク要因

以下の要因も、心房細動の誘因・悪化要因になり得ます。日常生活を見直すうえでの参考にしてください。

カフェインの過剰摂取 コーヒーやエナジードリンクの飲みすぎは心拍を乱す原因になることがあります

精神的ストレス 慢性的なストレスは自律神経のバランスを乱し、心房細動を誘発することがあります

睡眠不足 慢性的な睡眠不足は心臓への負担を増やし、発作の引き金になる場合があります

慢性肺疾患 肺の疾患による低酸素状態が心臓に影響することがあります

これらは生活習慣の改善で対処できるものです。節酒・禁煙・適度な運動・ストレス管理・十分な睡眠を意識することで、心房細動の発症リスクや再発リスクを下げることができます。

放置するとどうなるか——合併症のリスク

心房細動を放置した場合、特に怖いのが脳梗塞心不全の発症です。

脳梗塞

心房細動になると心房の中で血液がよどみ、血栓(血の塊)ができやすくなります。この血栓が脳の血管に流れ込んで詰まると脳梗塞を引き起こします。

心房細動に由来する脳梗塞は、発症すると重篤になりやすく、命に関わるケースや、助かっても重い後遺症が残るケースが多いのが特徴です。そのため、心房細動の治療でまず最初に取り組むのが、血栓を防ぐ「抗凝固療法」です。

心房細動の患者さんは脳梗塞の発症リスクが健常者に比べて約5倍高いとされています。症状の有無にかかわらず、治療を続けることが非常に重要です。

心不全

心拍が長期間にわたって速く不規則な状態が続くと、心臓の筋肉が疲弊し、血液を全身に送り出す力が弱まります。これが心不全です。息切れ・むくみ・倦怠感などの症状が現れ、日常生活に大きな支障をきたします。

まとめ

・心房細動の3大原因は「加齢」「高血圧・心臓病」「飲酒」
・睡眠時無呼吸症候群・甲状腺機能亢進症も重要なリスク要因
・カフェイン・ストレス・睡眠不足など生活習慣も発症・悪化に影響する
・放置すると脳梗塞・心不全などの重篤な合併症リスクが高まる
・生活習慣の改善と早期の専門医受診が、発症・悪化の予防につながる

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