コラム

心房細動とは? 

高齢化とともに増加する心房細動。動悸や息切れなどの症状から、脳梗塞リスク、薬物療法・カテーテルアブレーションまでやさしく解説します。

■1. 心房細動とはどんな病気か

心臓は「電気信号」によってリズムよく動いています。右心房にある洞結節(どうけっせつ)という場所から電気信号が作られ、心臓の筋肉に伝わることで、規則正しい収縮と拡張を繰り返しています。健康な状態では、1分間に50〜100回ほどの信号が生み出されます。

ところが何らかの原因でこの電気信号に異常が生じると、心臓のリズムが乱れてしまいます。この状態を「不整脈」と呼びます。

心房細動は不整脈の一種で、心房の中で不規則な電気信号が複数発生することによって起こります。心房が細かく震えてけいれんのような状態となり、心臓がうまく機能しなくなります。

心房細動そのものが直接命に関わることは多くありませんが、脈の乱れによる強い動悸のほか、脳梗塞や心不全などの重篤な合併症を引き起こすリスクがあります。放置せず、早めに専門医を受診することが大切です。

■2. 心房細動の種類と日本における患者数

心房細動は、症状が続く時間の長さによって以下の3種類に分類されます。

種類

特徴

注意点

発作性

発作的に起こり、1週間以内に自然に止まる

ホルター心電図(24時間心電図)での診断が必要

持続性

自然には止まらず、1週間以上続く

治療しないと慢性化するリスクがある

慢性(長期持続性)

常に続いており、1年以上持続している状態

治療が難しくなるため早期発見・早期治療が重要

無治療のまま放置すると、発作の頻度・時間がどんどん長くなり、発作性→持続性→慢性へと進行していきます。心房細動が長く続くほど治療の難易度が上がるため、早期の対応が重要です。

日本での患者数は今後さらに増加

日本における心房細動の有病率は約0.6%と推定されていますが(40歳以上を対象とした疫学調査より)、年齢が上がるにつれて急増します。70代の男性では約3.4%、80歳以上の男性では約4.4%に達します。

高齢化の進行に伴い、2050年には患者数が約103万人に達すると予測されており、他人事ではない病気です。

■3. 3大症状―動悸・息切れ・めまい

心房細動になると心拍のリズムが完全に乱れ、特に発症初期は心拍が速くなります。主な症状は以下の3つです。

動悸

息切れ

めまい

脈が不規則で速くなるため、胸のバクバク感や脈が飛ぶような感覚を覚える

心拍数が速くなることで心臓が疲弊し、収縮機能が低下して息苦しさが生じる

心房細動が止まった際に洞結節の働きが遅れ、一時的に血流が止まることで起こる

そのほか、胸の不快感・痛み、全身のだるさを感じることもあります。ひどい場合には失神に至ることもあるため注意が必要です。

「症状がないから大丈夫」は危険です。心房細動の患者さんの40〜50%は自覚症状がありません(無症候性心房細動)。脳梗塞などの重篤な合併症が起きてから初めて発覚するケースも少なくありません。健診で心電図異常を指摘された場合は、症状の有無にかかわらず必ず専門医を受診してください。

■4. 心房細動の原因とリスク要因

心房細動の原因はさまざまですが、共通しているのは「心臓に負担がかかった状態」であるということです。主なリスク要因を確認しておきましょう。

  • 1.  加齢年齢とともに心臓の機能や電気信号を伝える組織が老化し、心房細動が起きやすくなります。50代から発症頻度が上がり始め、高齢になるほど有病率が高まります。

  • 2. 高血圧・心臓病高血圧、心臓弁膜症、心筋症、狭心症・心筋梗塞などの基礎疾患があると、心臓に直接的な負担がかかり、心房細動を引き起こしやすくなります。

  • 3. 飲酒(アルコール)アルコールの分解産物であるアルデヒドが心筋を傷つけます。過度な飲酒は心房細動の大きなリスク要因です。

  • 4. 睡眠時無呼吸症候群睡眠中に呼吸が止まることで低酸素状態になり、心臓に負担をかけます。肥満が主な原因ですが、痩せている方でもいびきや日中の強い眠気がある場合は要注意です。

  • 5. 甲状腺機能亢進症甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気で、頻脈の一種として心房細動が現れることがあります。初診時には甲状腺ホルモンの検査も行われます。

  • 6. 生活習慣・その他カフェインの過剰摂取、精神的ストレス、慢性的な睡眠不足、慢性肺疾患なども心房細動の誘因になり得ます。

加齢による心房細動は避けられませんが、高血圧のコントロール、節酒、適切な体重管理、睡眠の改善などの生活習慣の見直しによって、発症や進行のリスクを下げることができます。

■5.心房細動の治療法

心房細動の治療は大きく「薬物療法」と「カテーテルアブレーション治療」の2種類があります。どちらを選択するかは、症状の程度・持続期間・患者さんの年齢や状態によって、ガイドラインに従って決定されます。

薬物療法

 カテーテルアブレーション

血栓を予防する抗凝固薬(DOAC)の服用が最優先

細い管(カテーテル)で異常な電気信号の発生源を焼灼

心拍数を整えるレートコントロール療法

心房細動の約85%は肺静脈が起源のため、その周囲を治療

心房細動そのものを抑えるリズムコントロール療法

1回の治療での成功率は概ね80%程度

根治ではなく症状を抑える対症療法が中心

再発した場合でも2回目の追加治療が可能

自己判断で服薬を中断しないことが重要

高齢者にも適応できるケースが増えている

この記事のまとめ

  • 心房細動は心房内に不規則な電気信号が発生し、心臓がうまく機能しなくなる不整脈の一種

  • 主な症状は「動悸」「息切れ」「めまい」だが、40〜50%は無症状のまま進行する

  • 3大リスク要因は「加齢」「高血圧・心臓病」「飲酒」。睡眠時無呼吸症候群も要注意

  • 放置すると脳梗塞・心不全のリスクが高まる。健診で指摘されたら受診を

  • 治療は「薬物療法」と「カテーテルアブレーション」の2本柱。早期治療が成功率を高める

  • 正しく理解して適切に対応すれば、決して怖い病気ではない

よくある質問