不整脈について

心室細動の原因

心室細動を引き起こす主な原因

心室細動は、心臓のポンプ機能が失われ、生命に関わる危険な不整脈です。その原因は多岐にわたりますが、主に以下のようなものが挙げられます。

  • 虚血性心疾患: 心筋梗塞や狭心症により心筋に十分な酸素が供給されなくなると、心臓の電気信号が乱れやすくなります。

  • 心筋症: 心臓の筋肉自体に異常が生じる病気です(拡張型心筋症、肥大型心筋症など)。心筋の構造や機能の変化が、心室細動のリスクを高めます。

  • 遺伝性疾患: 特定の遺伝子の異常が原因で、心臓の電気的な安定性が損なわれることがあります。代表的なものにブルガダ症候群やQT延長症候群があります。

  • 電解質異常: 体内のカリウムやマグネシウムなどの電解質バランスが崩れること(低カリウム血症、低マグネシウム血症など)は、心臓の電気信号伝達に影響を与え、心室細動を誘発する可能性があります。

  • 薬剤性: 一部の抗不整脈薬や、特定の精神科系薬剤などの副作用として心室細動が起こることがあります。

  • その他: 低体温、心臓手術後の影響なども、心室細動を引き起こす要因となり得ます。

(1)虚血性心疾患(心筋梗塞狭心症など)

心室細動を引き起こす最も一般的な原因の一つが、虚血性心疾患です。これは、心臓の筋肉(心筋)に十分な血液が供給されなくなる状態を指します。心筋梗塞や狭心症といった病態がこれに該当します。

心筋梗塞では、心臓の血管(冠動脈)が詰まり、心筋の一部が壊死してしまいます。この壊死した心筋は、電気信号の伝達を妨げ、不規則な興奮を引き起こしやすくなります。

  • 心筋梗塞: 冠動脈の閉塞により心筋壊死が生じ、不整脈が発生するリスクが高まります。

  • 狭心症: 冠動脈が狭くなり、一時的に心筋への血流が低下することで、心筋が酸素不足に陥り、心室細動を誘発することがあります。

これらの状態では、心臓の筋肉の電気的な安定性が損なわれ、心室細動という、心臓がけいれんしたように細かく震え、全身に血液を送り出せなくなる危険な状態へと移行してしまうことがあります。

(2)心筋症(拡張型、肥大型など)

心室細動は、心臓の筋肉に異常が生じる心筋症によっても引き起こされることがあります。心筋症にはいくつかの種類があり、それぞれ心臓の機能に影響を与え、心室細動のリスクを高めます。

  • 拡張型心筋症: 心臓の筋肉が薄く引き伸ばされ、ポンプ機能が低下します。これにより、心臓全体が拡大し、血液を全身に送り出す力が弱まります。

  • 肥大型心筋症: 心臓の筋肉が厚く肥大し、心室の拡張が妨げられます。特に左心室の壁が厚くなることが多く、心臓が血液を送り出す際に抵抗が増加します。

これらの心筋症では、心臓の筋肉の構造や機能に異常が生じることで、電気信号の伝達が乱れやすくなり、結果として心室細動が発生するリスクが高まります。

心筋症の種類

主な特徴

心室細動との関連

拡張型心筋症

心臓の筋肉が薄く引き伸ばされ、ポンプ機能低下

心臓全体の拡大と機能低下により、不整脈が発生しやすい

肥大型心筋症

心臓の筋肉が厚く肥大し、拡張が妨げられる

心臓の筋肉の肥大により、電気信号の伝達が乱れる

(3)遺伝性疾患(ブルガダ症候群、QT延長症候群など)

遺伝性疾患は、心室細動の重要な原因の一つです。これらの疾患は、心臓の電気信号を制御するイオンチャネルの機能に異常が生じることで、心室細動を引き起こしやすくなります。

  • ブルガダ症候群: 特定の遺伝子変異により、心室の脱分極過程で異常な電流が生じ、心室細動を誘発することが知られています。特に、安静時や睡眠中に起こりやすいとされています。

  • QT延長症候群: 心電図のQT時間が延長する病態であり、遺伝的な要因が関与することが多いです。QT延長は、心室細動の引き金となる「トルサード・ポアンツ」という特殊な不整脈を起こしやすくします。

これらの遺伝性疾患は、自覚症状がない場合でも心室細動のリスクを抱えているため、家族歴に心臓突然死などがある場合は、専門医への相談が推奨されます。

(4)電解質異常(低カリウム血症、低マグネシウム血症など)

心臓の規則正しい拍動は、体内の電解質バランスが保たれていることによって維持されています。特にカリウムやマグネシウムは、心筋細胞の電気的な活動に不可欠なミネラルです。これらの電解質が異常な値になると、心臓の電気信号の伝達が乱れ、心室細動を引き起こすリスクが高まります。

電解質

異常な状態

心臓への影響

カリウム(K+)

低カリウム血症

心筋細胞の興奮性が低下し、不整脈を誘発しやすくなる

マグネシウム(Mg2+)

低マグネシウム血症

カリウムチャネルの機能に影響し、心室細動のリスクを高める

低カリウム血症は、利尿薬の副作用や下痢・嘔吐などによって生じることがあります。一方、低マグネシウム血症は、アルコール多飲や栄養不良などが原因で起こることが知られています。これらの電解質異常は、心電図上でも特徴的な変化を示すことがあり、早期発見・治療が重要となります。

(5)薬剤性(抗不整脈薬、一部の精神科系薬剤など)

心室細動は、特定の薬剤の副作用によって引き起こされることもあります。特に注意が必要なのは、抗不整脈薬や、一部の精神科系薬剤です。これらの薬剤は、心臓の電気的な活動に影響を与え、不整脈を誘発する可能性があります。

薬剤の種類

具体的な例

心室細動との関連

抗不整脈薬

クラスIa、Ic、IIIなど(例:アミオダロン、フレカイニド)

心臓の伝導速度や再分極に影響し、致死的な不整脈(Torsades de Pointesなど)を引き起こすことがあります。

一部の精神科系薬剤

三環系抗うつ薬、一部の抗精神病薬

QT時間を延長させる作用があり、QT延長症候群を介して心室細動のリスクを高めることがあります。

その他

一部の抗菌薬、制吐薬など

QT延長作用を持つ薬剤は、心室細動のリスク因子となり得ます。

これらの薬剤を使用する際は、医師の指示を厳守し、定期的な検査を受けることが重要です。また、新しい薬を服用し始めて体調に変化を感じた場合は、速やかに医師に相談してください。

(6)その他(低体温、電解質異常、心臓手術後など)

心室細動は、これまでご紹介した病気以外にも、様々な要因によって引き起こされることがあります。その一つが、極端な低体温です。体温が著しく低下すると、心臓の電気的活動が不安定になり、心室細動を誘発する可能性があります。

また、体内の電解質バランスの乱れも、心室細動の引き金となり得ます。特に、カリウムやマグネシウムの濃度が異常になることは、心臓の正常な電気信号の伝達を妨げ、不整脈を引き起こしやすくなります。

電解質異常の種類

心室細動との関連性

低カリウム血症

心筋の興奮性を高め、不整脈を誘発する

低マグネシウム血症

心筋の電気的安定性を低下させ、不整脈のリスクを高める

さらに、心臓手術を受けた後も、一時的に心室細動が起こりやすくなることがあります。手術による心筋への影響や、術後の体内環境の変化が原因と考えられています。これらの要因も、心室細動のリスクを高める可能性があるため、注意が必要です。

(7)特発性心室細動(明らかな原因がない場合

心室細動は、心臓のポンプ機能が著しく低下し、生命に関わる危険な不整脈です。これまでご説明したように、虚血性心疾患や心筋症、遺伝性疾患、電解質異常、薬剤などが心室細動の主な原因として挙げられます。

しかし、これらの明らかな原因が見当たらないにも関わらず、心室細動が発生することがあります。これを「特発性心室細動」と呼びます。

特発性心室細動は、一見すると健康な人に起こるように見えるため、予期せぬ突然死の原因となることがあります。そのメカニズムについては、まだ完全には解明されていませんが、以下のような要因が関与している可能性が指摘されています。

要因

説明

微細な心筋の異常

画像検査などでは捉えきれない、心筋の微細な構造や機能の異常が、不整脈の発生に関わっている可能性。

自律神経系の機能異常

ストレスや睡眠不足などが引き金となり、自律神経のバランスが乱れることで、不整脈を誘発する可能性。

未診断の遺伝的素因

家族歴がない場合でも、ごく稀に心臓の電気的な活動に関わる遺伝子の変異が、将来的に不整脈を引き起こす可能性。

特発性心室細動は診断が難しく、早期発見・早期治療が極めて重要です。もし、ご家族や親しい方が、原因不明の失神や心停止を経験された場合は、専門医にご相談ください。

よくある質問

  • Q.

    手術時間はどのくらいですか?

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    A.

    発作性心房細動の場合:2~3時間

    持続性心房細動の場合:3~4時間

    発作性上室性頻拍症・心室期外収縮等の場合:1~2時間

    心房細動の場合は静脈麻酔下で行うため導入時間等も含まれます。

    発作性上室性頻拍症・心室期外収縮は基本的に局所麻酔のみとなります。

    また、手術時間はおよその目安です。患者さんの状況により時間に差があります。

  • Q.

    手術中痛みはありますか?

    expand_more

    A.

    心房細動の治療では鎮痛剤を使用し静脈麻酔下で行うので手術中の痛みはありません。

    発作性上室性頻拍症・心室期外収縮の治療時は、通電中(治療中)に治療部位によっては胸部違和感を感じることはありますが、強い痛みを伴うことは少ないです。ただ、症状が強い場合には鎮痛剤を使用して治療することもあります。

  • Q.

    入院期間はどのくらいですか?また、手術後すぐに退院できますか?

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    A.

    心房細動の場合は3泊4日です。

    入院当日:経食道超音波検査等の諸検査
    2日目:アブレーション手術
    3日目:心電図、レントゲン、創部(手術でできた傷)等の確認
    4日目:退院

    発作性上室性頻拍症・心室期外収縮等は2泊3日です。

    入院当日:心電図等の諸検査
    2日目:アブレーション手術
    3日目:退院

    これらは一般的な患者さんの入院の流れです。患者さんの病状や全身状態により入院期間、検査等は変更があります。

  • Q.

    手術・入院費用はどのくらいですか?

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    A.

    患者さんによって金額は異なりますが、3割負担の方で窓口の負担が30~50万円前後です。ただし、ほとんどの方が限度額適用認定もしくは高額療養費制度を利用して、実際のお支払いは上記金額よりも少額となっています。

    <例>70歳以上・年収約370万円~770万円(3割負担)

    窓口の負担(3割)が30万円かかる場合、212,570円を高額療養費として支給し、実際の自己負担額は87,430円となります。

    ※自己負担額は年齢や収入によって異なりますので、ご自分の自己負担額をお知りになりたい方は下記までお問い合わせください。

    健康保険組合、全国健康保険協会、共済組合、国民健康保険組合にご加入の方:ご加入の医療保険者まで

    国民健康保険にご加入の方:お住まいの市区町村の担当窓口まで

    後期高齢者医療制度の方:各都道府県の後期高齢者医療広域連合、お住まいの市区町村の担当窓口まで

    高額療養費制度の詳しい内容は、厚生労働省のホームページでも確認できます。

  • Q.

    手術後普通の生活は送れますか?生活に支障をきたすことはありますか?

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    A.

    通常の日常生活は問題なく、生活には特に支障はありません。ただ、穿刺部の創傷、手術後の炎症等があるので1~2週間前後は激しい運動や強い負荷のかかる動作は避けてください。

  • Q.

    一度手術すれば必ず治りますか?再発することはありますか?

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    A.

    発作性心房細動の場合:初回手術で75~80%、2回目で85~90%の治癒率で、約2割の方が2回の手術を必要とします。また、同じ発作性心房細動であっても患者さんの病状、状態により異なります。

    持続性心房細動の場合:持続期間・病状により大きく異なりますが50%程度は複数回の治療を要します。持続期間が5年以内で、心房拡大が無い状態であれば約80%で洞調律維持(正常な脈に安定すること)が可能となります。

    心室期外収縮の場合:手術中に出現している心室期外収縮の発生場所を同定するため手術中にある程度心室性期外収縮が出ていないと、場所を同定できず治療成績は下がります。手術成功率は心室性期外収縮の出現場所により異なりますが、一般的な場所(心臓の内側)であれば、90%前後の治癒率です。しかし、起源が心臓の外側にある場合は、治療成功率は50~80%になります。

    発作性上室性頻拍の場合:97%で根治が可能となります。

  • Q.

    たまに胸がドキドキしたり苦しかったりするのですが、検査を受けても異常が見つかりません。アブレーションをすれば治りますか?

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    A.

    ドキドキする症状(いわゆる動悸症状)は必ずしも不整脈が原因とは限りません。不整脈(脈の乱れ)が原因での症状であることはもちろんありますが、ホルモン異常や心因性、脱水であることもありますし、全身疾患に伴う頻脈もあります。やはり症状時の心電図や器質的疾患が無いか等含めて診断をしなければ判断できません。症状の原因が頻脈性不整脈である場合はアブレーションによる治療が可能となります。

  • Q.

    アブレーションの適応になるのはどのような症状ですか?

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    A.

    症状ではアブレーションの適応は決定できません。症状の原因が心房細動、上室性頻拍、心室期外収縮、心室頻拍等の不整脈に伴うものであればアブレーションの適応となります。

  • Q.

    他の病院で不整脈と言われました。アブレーション手術をした方がいいですか?

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    A.

    不整脈は正常な脈(洞調律と呼ばれます)以外の脈の乱れる状態の総称で、一概に不整脈と言っても色々な種類があり、治療の必要のないものもあります。また、同じ不整脈であっても頻度や持続時間等でも治療方針は変わってきます。まずはしっかりとその病名(不整脈の種類)を主治医の先生に確認し相談して頂くと良いと思います。
    判断が難しい場合は当院で検査等させて頂きますのでご相談ください。